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東京地方裁判所 昭和42年(特わ)12号 判決

本店所在地

東京都墨田区石原町四丁目一九番地

株式会社田中徳右ヱ門パイプ商店

(右代表者代表取締役 田中徳右ヱ門)

本籍

東京都墨田区石原四丁目一九番地の三

住居

同 都同 区石原四丁目三五番一五号

会社役員

田中徳右ヱ門

大正一二年一月二日生

右被告人らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官上田政夫出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告株式会社田中徳右ヱ門パイプ商店を罰金八〇〇万円に、被告人田中徳右ヱ門を懲役四月に各処する。

被告人田中徳右ヱ門に対し、本裁判確定の日から二年間、右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告株式会社田中徳右ヱ門パイプ商店は、東京都墨田区石原町四丁目一九番地に本店を置き、鋼管の販売を主たる営業目的とする資本金三、〇〇〇万円の株式会社であり、被告人田中徳右ヱ門は、右被告会社の代表取締役としてその業務全般を統轄しているものであるが、同被告人は被告会社の業務に関し、法人税を免れるため架空仕入を計上して簿外預金を蓄積する等不正な方法により所得を秘匿したうえ、

第一、昭和三八年一月一日より同年一二月三一日に至る事業年度において、被告会社の実際所得金額は別紙一修正損益計算書記載のとおり四、九五九万三、六二八円であつてこれに対する法人税額は一、八二二万五、七〇〇円であるにもかかわらず、昭和三九年二月二八日東京都墨田区業平橋一丁目一二番地所在の所轄墨田税務署において同署長に対し、所得金額は一、三五五万六、七五四円でありこれに対する法人税額は四五三万五、一六〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出し、右事業年度分の正規の法人税額と申告税額との差額一、三六九万〇、五四〇円については法定の納付期限内に納付せず、もつて不正な行為によつて右同額の法人税を逋脱した、

第二、昭和三九年一月一日より同年一二月三一日に至る事業年度において、被告会社の実際所得金額は別紙二修正損益計算書記載のとおり六、一〇三万一、七七二円であつてこれに対する法人税額は二、一三五万一、六一〇円であるにもかかわらず、昭和四〇年二月二六日前同所所在の所轄本所税務署において同署長に対し、所得金額は二、五七一万三、六五三円でありこれに対する法人税額は七九三万九、七五〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出し、右事業年度分の正規の法人税額と申告税額との差額一、三四一万一、八六〇円については法定の納付期限内に納付せず、もつて不正な行為によつて右同額の法人税を逋脱した、

第三、昭和四〇年一月一日より同年一二月三一日に至る事業年度において、被告会社の実際所得金額は別紙三修正損益計算書記載のとおり五、二五一万〇、二二一円であつてこれに対する法人税額は一、七四五万三、三〇〇円であるにもかかわらず、昭和四一年二月二六日前記本所税務署において同署長に対し、所得金額は二、七一四万六、二八四円でありこれに対する法人税額は八〇八万四、三七〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出し、右事業年度分の正規の法人税額と申告税額との差額九三六万八、九三〇円については法定の納付期限内に納付せず、もつて不正な行為によつて右同額の法人税を逋脱した

ものである。

(証拠の標目)

(一)、全般について、

一、登記官宮崎健造作成の登記簿謄本

一、小島元次の大蔵事務官に対する質問てん末書五通(昭和四一年八月三〇日付=以下四一・八・三〇の如く略記、四一・九・五、四一・九・七、四一・九・八、四一・九・一四)並びに検察官に対する供述調書

一、小林正次の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(四一・八・三〇)

一、国税査察官山口富男作成の簿外預金総括表、簿外普通預金入出金明細表並びに定期預金利子明細表

一、日本勧業銀行大森支店長高木正一、住友銀行川崎支店長清水衛各作成の普通預金元帳写

一、大和銀行浅草橋支店長掛飛吉朗作成の普通預金、定期預金元帳写

一、日本勧業銀行本所支店長和田与久、同銀行茅場町支店長岩戸太郎、同銀行蔵前支店長竹田哲朗、同銀行築地支店長深谷光茂、同銀行横山町支店長森昭、同銀行小伝馬町支店長柳田元茂、同銀行五反田支店長松本隆治、同銀行上野支店長児玉新七郎、三菱銀行本所支店長大杉正、同銀行大井支店長吉村泉太郎、富士銀行駕籠町支店長奥村信太、埼玉銀行浅草支店長伊藤武夫、日本相互銀行六郷支店長藤田時次郎、大和銀行京橋支店長富士芳明、三井銀行浅草橋支店長斉藤善雄、東信用組合代表理事滝沢直治郎各作成の証明書

一、日本勧業銀行本所支店長和田与久、同銀行千葉支店長中見利夫、同銀行甲府支店長保知孝一郎各作成の支払利息証明書

一、日本勧業銀行神田支店長池内英夫作成の「定期預金及同解約利息について」と題する書面

一、日本勧業銀行押上支店長青木一男作成の「定期預金元帳等の写の証明について」と題する書面

一、日本勧業銀行亀戸支店長金子勘治、同銀行三河島支店長相原弘三郎、同銀行千葉支店長中見利夫、同銀行金沢支店長一宮弘道、同銀行山形支店長伊沢喜久雄各作成の「取引内容について」と題する書面

一、日本勧業銀行甲府支店長保知孝一郎作成の「預金元帳写の証明について」と題する書面

一、中央信用金庫かつぱ橋支店長福岡孝介作成の定期預金証明書

一、国税査察官服部司作成の法人税額計算書三通

一、押収にかかる元帳二綴(昭和四二年押第五〇一号の一、二)、試算表四綴(同号の三ないし六)、総勘定元帳一綴(同号の一四)、メモ書振替伝票一葉(同号の一八)、担保品預り証一葉(同号の一九)、預金メモ(同号の二一)、ノート二冊(同号の二四、二五)並びに法人税決定決議書関係書類綴一綴(同号の二七)

一、被告株式会社田中徳右ヱ門パイプ商店代表取締役田中徳右ヱ門作成の上申書三通

一、被告人田中徳右ヱ門の大蔵事務官に対する質問てん末書一一通並びに検察官に対する供述調書一通

一、被告人田中徳右ヱ門の当公判廷における供述

(二)、判示各事実を通じ、別紙一ないし三修正損益計算書の勘定科目のうち売上高の科目に関し、

一、小林正次の大蔵事務官に対する質問てん末書三通(四一・九・一〇、四一・九・一三、四一・一一・四)および検察官に対する供述調書並びに同人作成の上申書

一、小笠原義雄、高津二三夫の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一、溝口暉雄作成の照会事項に対する回答書

一、押収にかかる売上帳三綴(前同押番号の八)、物品出納帳一綴(同号の九)、金銭出納帳四冊(同号の一一)、出庫伝票一綴(同号の二二)並びに領収証一二葉(同号の二六)

(三)、同じく期首商品棚卸高および期末商品棚卸高の各科目に関し、

一、小笠原義雄作成の上申書二通

(四)、同じく商品仕入高の科目に関し、

一、小島元次作成の上申書

一、小林正次の大蔵事務官に対する質問てん末書三通(四一・九・一〇、四一・九・一三、四一・一一・四)および検察官に対する供述調書並びに同人作成の上申書

一、泰道時夫の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、今井正明の大蔵事務官に対する質問てん末書並びに検察官に対する供述調書

一、国税査察官服部司作成の架空仕入調査資料三通

一、押収にかかる銀行勘定帳計六冊(前同押番号の七、一二、一六)、物品出納帳一綴(同号の九)、仕入帳計二綴(同号の一〇、一七)、手形受払帳計四冊(同号の一三、一五)並びに入庫伝票一綴(同号の二三)

(五)、同じく貸倒引当金戻入益、価格変動準備金戻入益、貸倒引当金繰入損、価格変動準備金繰入損の各科目に関し、

一、本所税務署長山本栄吉作成の証明書

(六)、同じく事業税の科目に関し、

一、本所税務署長作成の「法人税申告書の送付」と題する書面

(法令の適用)

(一)、被告人田中徳右ヱ門に対する判示各所為中、第一および第二の事実はいずれも昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条により、その改正前の法人税法第四八条第一項に、第三の事実は昭和四〇年法律第三四号法人税法第一五九条第一項に各該当するところ、所定刑中それぞれ懲役刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文、第一〇条により最も犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をなし、その刑期範囲内において同被告人を懲役四月に処し、なお諸般の情状を考慮し同法第二五条第一項を適用して本裁判確定の日から二年間、右刑の執行を猶予する。

(二)、被告株式会社田中徳右ヱ門パイプ商店については、その代表者たる被告人田中徳右ヱ門が同会社の業務に関して前記各違反行為をしたものであるから、判示第一および第二の事実については昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条により、その改正前の法人税法第五一条第一項に従いそれぞれ同法第四八条第一項の罰金刑を、また判示第三の事実については昭和四〇年法律第三四号法人税法第一六四条第一項に従い同法第一五九条第一項の罰金刑をそれぞれ科すべく、しかして右各違反行為は前示のとおり刑法第四五条前段の併合罪に該るので、同法第四八条第二項に則り、その合算額の範囲内において同被告会社を罰金八〇〇万円に処する。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 近藤暁)

別紙一

修正損益計算書

株式会社田中徳右衛門パイプ商店

(昭和38年1月1日 昭和38年12月31日)

〈省略〉

別紙二

修正損益計算書

株式会社田中徳右衛門パイプ商店

(昭和39年1月1日 昭和39年12月31日)

〈省略〉

別紙三

修正損益計算書

株式会社田中徳右衛門パイプ商店

(昭和40年1月1日 昭和40年12月31日)

〈省略〉

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